台風19号が近づいてきて雨足が強くなる中、僕は1人オフィスでカフェオレを飲みながらまったりと佇んでいるわけなんですが、皆さんお水は確保できてますか?
今日は超久しぶりに記事を書いてみようと思ったのは、会社としても自分としてもいわゆる「節目」を感じていて、これまでの数年をちょっと振り返ってみたいなと思った次第なのです。
SESビジネスをやってきた人間がそこからどのようにビジネスを展開していったのか、また受託や自社サービスをやる中で気付かされたことなんかを書き綴って行きたいなと思います。
数年前くらいから受託をやるようになった
それまでSESでなんとなく食ってたわけなんですが、あるタイミングで一括受託の話が舞い込んできたんですよね。
やるやらないというよりはやらざるを得ない状況になっちゃったのもあって、まぁ流れで受託を始めるわけなんです。
最初はだいぶしんどかったんですが、予算を先にもらえてたのと良いメンバーに恵まれていたのもあって、まあまあ上手く回るようになりました。
新規開発とかじゃなくて既存サービスの運用を一括で引き継いだ感じっすね
僕がPMとして入って工数管理とか顧客側の対応なんかを取りまとめて、だんだん規模が大きくなってきたら組織化して僕の身代わり用意して。
そしてまた別の受託案件がきたら最初は僕が入って、、みたいなことをずっと繰り返しやってきました。
受託をやってみて良かったなと思う点
まず大きいのは「社内にどんどんナレッジが溜まっていくこと」ですね。
今はConfluenceをベースにしてスプレッドシートなんかもリンクでまとめたりして、新しいメンバーが会社に入ってきた時でもすぐにキャッチアップできるような仕組みにしてます。
またPJ内で工数管理をしっかりやることで残業が大幅に削減できました。
新機能のリリース前とかは工数が膨れる時もあるんですが、僕がカバーしたりして基本的にはみんな定時に帰れるようにマネジメントしてます。
まぁあとは同じ社員同士で一緒に仕事ができるっていう当たり前のことなんですけど、SESだけでやってた時とはロイヤリティが明らかに違うよなっていうのは感じますよね。
僕は同じ場所で一緒に作業し続けるのが嫌なタイプなんで、会議室に引きこもったりとかしちゃうんですけども。
規模をそんなに大きくしてないってのもありますが、退職者は年に1人いるかいないかくらい。平均勤続年数とかだと5、6年くらいになるのかな。
受託をやっててしんどいなぁと思う点
まず大きいのが請けた仕事へのコミットメントがSESとは全然違うってことですよね。
失敗したら会社的にも死ねるし、最終的なケツは僕が拭くんですけどめちゃめちゃコミットせざるを得ないんです。
SESはトラブルとかあってもごめんなさいで終わって、せいぜい請求にペナルティが課せられるとかそんなんじゃないっすか。
勤怠不良とか突然辞めますみたいなのはやっぱり「はぁ?」ってなるので、採用基準をめちゃめちゃ上げて選考プロセスも変えました。
あとは、長く受託をやってるとちょっとマンネリというか、やっぱり同じフェーズの同じような仕事をずっとやることになるので、新しい受託の案件を取ってきてもやることはそんなに変わらないっていうのはありますね。
これは営業がもっとチャレンジングな案件取ってこいやっていうことでもあるんですけど、やっぱり社内のリソースとかがそうなっちゃってるので、どうしても同じような案件に偏ってしまうんす(これは目下の課題)。
受託だけだとあんまりスケールしない
受託もある程度規模が大きくなってくるとメンバーを追加したりして売上自体も伸びてはいくんですが、工数を人月ベースで計算しているのでそこまで急激には成長していきません。
ある程度はバッファを取っているので利益率は高いけど、SESで数を回した方が売上はもっと上がるんだろうなぁというのは感じます。あと楽だしね。
取引先はエンドユーザーになるので、受注までの時間とプロセスも増えます。
基本は紹介と問い合わせで受注してるんですが、新規開拓が結構しんどいっす。
あとは結局のところSESも受託も「下請け」っていうポジションは変わらなくて、ムチャクチャなことを言ってくる顧客とは自然と離れていっちゃいますよね。
顧客と一緒に同じ方向を向いて戦ってる感はあるんですけど、どうしてもそこの壁は感じちゃうというか。
この辺から、どうやって次のフェーズに行こうかを考えるようになりました
人月計算から課金形態を変えて大失敗
人月をベースにしていると指数関数的に売上が増えていかないことに悩んでいた時期があって、提供するサービスごとに色々な課金方法を試していました。
従量課金制の仕組みに変更してみた
まずは、基本の受託以外についでで作業的に請けていた仕事を、「基本料金+件数課金」みたいな形式にガラッと変えてみたんですよね。
これが数があるうちは良かったんですけど、顧客のサービスが伸びないとこちらの課金額も全く伸びなくて、結果的に赤字を出しちゃったんです。
単純に値決めのシミュレーションがミスってたってのもあるんですけど、人月を固定でもらい続けるのとはリスクが全然違うので、そこを見誤ったってのが1番デカかったですね。
件数課金にすると「作業量」が大事になってくるので、そこを安定させるのが一苦労なんす
レベニューシェア(事業収益の分配)に挑戦
次にやってみたのがいわゆる「レベニューシェア」ってやつです。
サービスの売上や利益に対して、何パーセントかを手数料として頂く収益モデルですね。
既存の顧客がどんどん成長して大きな売上を上げていたのを間近で見ていたので、同じ業種の新規の顧客と契約する際に先方の希望もあってトライしてみたのです。
売上のシミュレーションはもらっていてレベニューの比率も悪くはなかったので、ぜひ一緒にやっていきましょう!となったんですが、これもやっぱりサービスが伸びないと全然売上が立たなくて工数ばかりかかってしまいます。
特にレベニューだとこちら側もコミットしてやるんですけど、肝心の舵取りの部分が握られているので、最終的には落ちていく売上をただ眺めていくだけな状態になってしまいました。
こちらも結果的に、大きな赤字を掘ることになりましたね。
そもそも最初からレベニューでって言ってくるところは予算が無いので、肝心のサービスやマーケに予算がかけられなくて死んでいくやで
レベニューシェアで事業やるの、やっぱキツイかも。ポジションが中途半端なんだよね。
立ち上げ時期は売上少ないし、伸びてきてもそこまで利ザヤが取れない。
工数かけるとコストは増えるし、逆に工数かけないとなかなか売上も伸びていかない。人月の方が楽ってなっちゃうよなー
— SES営業のノウハウ手帳 (@SESeigyou) October 14, 2020
いよいよ自社サービスにトライ
この頃にはSESというよりは受託で食ってる会社になっていたんですが、受託の案件が1つ終了して1ライン空いちゃったんですよね。
それですぐには案件が無いやってことで半ば見切り発車的に自社サービスを始めたんです(ここがもう失敗)。
自社サービスの最初の失敗
まず最初にやったのが受託に繋がるような少額のドアノック的なサービス。
LP作って広告回してみたいな感じで、少額だけどちょこちょこ受注できるようにはなったんです。
本来の目的は受託に繋げることだったんですけど、受注しても1ショットで終わっちゃってなかなかその先の受託には繋がらない。
びっくりするような上場企業からも問い合わせをもらって、実際に受注して取引口座はできるんですけどそれっきり的な。
これもあとあと分析してみると、ターゲットにしている企業は合ってるんだけど、担当する部署がちょっとずれてるんですよね。
やってみなきゃわからないけど、失敗するとツライ。。
流行りに乗ってメディアも作ってみた
これはいわゆるバーティカルメディアというやつで、ある分野に特化して送客をするビジネスモデルなんですけど、最初はまぁまぁ上手くいったんですよね。
僕もこのサイトとかで色々と勉強できてたのもあって、あれよあれよとPVが上がっていって売上も伸びていったんです。
それで色々な企業から広告の掲載依頼とかもくるようになって、これは化けるか?と思ってた矢先に、Googleの検索アルゴリズムのアップデートがあって、マジでビビるくらいにPVが減っていっちゃったんですよね。
この変動については知ってる人は知ってるかと思うんですが、要するに戦うためのルールが大きく変わっちゃったんです。
それも数回に渡って今も変動し続けているので、これが原因で廃業したメディア系の会社もあるくらい。
ここ数年の動きとSES、これから先について
ざっーっとここ数年の動きを書いてみたんですけど、なんだかんだ売上は前年比の2倍くらいまで成長させてて、トライアンドエラーですごい大変だったけど自分的にもだいぶ成長できたなとか思ってたんです。
で、今期は予算目標をだいぶ高めに見積もってて、未達になりそうだからSESで売上増やそうぜって話になったんですよ。
それで僕もちょっと動いたら、ぱぱぱっと3件くらい決めちゃって、アレ?僕が必死こいてやってきたことってなんだったんだっけ?ってふと思っちゃったんですよね。
受託や自社サービスで頑張って売上を作ってきたけど、SESをやったらいとも簡単に売上と利益が作れちゃった。。
SESのその先にあるものは?
SESの先にあるのは受託だったり自社サービスだったりするんじゃないだろうかって、社員の為になるのはそっちの方向なんじゃないかって走り続けてきたんですよ。
だけどP/Lに落として数字だけで見るとあんまり変わらないというか、むしろSESの方がリスクも工数も少なくて済むっていうのが見えてしまって、働き方を優先するあまり視野が狭くなっていたのかもしれません。
ここまでとりとめもなく書き殴っちゃったんですけど、SESから脱却してサービスを展開したいっていう人には1つの失敗事例として見てもらえればいいかなと思っています。
また僕的にこの方向性はちょっと違うかも、と考えるきっかけになったので頭の中で「これから」について整理する為に書いてみました。
なんかぐるっと1周してきてSESやって感じた違和感というか、そもそもどこを目指してたんだっけ的な思いとか、ちょっとだけ休みをもらって考えたいなと今は思ってます。
会社として仕事の仕方、請け方にこだわっていたところもあるのかもしれません
さて、台風だしさっさと帰りますか。
コメント
いつも拝見しております。
大したコメントはできないのですが、いつも参考にさせていただいております。
今後とも更新よろしくお願いいたします。
おおお、コメントありがとうございます!
久々に記事を書いたのでちょっとコラムっぽい記事になっちゃいましたが、また時間が空いた時に更新したいと思います。
7年前くらいにサイト立ち上げてから40記事ちょっとしか書いてなくて、ゆるふわなサイトですが、引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m
現場で働いてるエンジニアです。
初めてブログを拝見させていただきました。
契約のことがあまりわかっておらず、ブログの内容は一通り拝見させていただき勉強になりましたが、
私が疑問に思っている事が解消できなかったのでご教授願えませんでしょうか。
本当は会社に聞けばよいのかと思うのですが事情がありましてあまり聞きたくないのです。
・SESは通常は単金での契約だと思うんですが、時給契約ってあるんでしょうか?現在常駐している会社と時給ベースの契約があるらしく、どうも派遣契約ではなさそうなのです。
・私の会社がパートナーさんのエンジニアを顧客とSES契約したのですが、この契約についてもう少し詳細にすると、私の会社↔顧客のとSES契約とパートナーさん↔私の会社間のSES契約の2つになるのでしょうか?
・SESは通常は単金での契約だと思うんですが、時給契約ってあるんでしょうか?現在常駐している会社と時給ベースの契約があるらしく、どうも派遣契約ではなさそうなのです。
>はい、時給契約も案件によってはありますね。これは案件元が決めてるはずです。
・私の会社がパートナーさんのエンジニアを顧客とSES契約したのですが、この契約についてもう少し詳細にすると、私の会社↔顧客のとSES契約とパートナーさん↔私の会社間のSES契約の2つになるのでしょうか?
>はい、そのようになります。なので間に入っている形になっていると思うので、それぞれ2社間で契約を巻く必要があります。
ご返信ありがとうございました。
モヤモヤがだいぶスッキリしてきました。
もう少し教えて頂けると助かります。
指示系統など色々と面倒そうな面もあるSES契約ですが、大手のSIerなどがSEを投入する時に派遣ではなくSESにしたがることがあります。これは、派遣のように細かいコントロール(指示)はしたくない、管理が面倒くさい、契約がSESの方がより柔軟だから、などそのような理由なのでしょうか。
大手のSIerがSES契約にしたがる1つの要因としては、エンジニアを集めやすいというのがあるんじゃないかなと思います。
「SESの方が契約が柔軟」というところにも繋がってくるかとは思うんですが、一度に複数名のエンジニアを面談できたりもしますよね。派遣だと原則は事前面接が禁止されてますし。
以前のSES業界の記事でも少し触れたのですが、基本的にSESはSIerにとって都合の良い仕組みなので、昔からやっているSESでやりたがる会社が多いのだと思います。
ご返信ありがとうございました。
ご提示頂いたブログも合わせて拝見させて頂きました。
長年疑問に思ってたことが色々と氷解しました。
ちなみに派遣でなくてもSESにおいても面接はNGと思っておりました。。